「たり・り」
要点確認
「たり・り」の意味
完了〈~た〉
(例)世を背けり。〈出家した。〉
存続〈~ている・~てある〉
(例)紫だちたる雲の…〈紫がかっている雲が…〉
「たり・り」の活用
・「たり・り」の活用……ラ変型
| 基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| たり | たら | たり | たり | たる | たれ | たれ |
| り | ら | り | り | る | れ | れ |
「たり・り」の接続
㈠「たり」の接続……連用形接続
㈡「り」の接続……サ変動詞の未然形・四段動詞の已然形接続
解説
「たり・り」の意味
「たり」と「り」は、どちらも「つ・ぬ」と同じ完了の助動詞です。
(一)完了
完了は、動作・作用・状態が終わったことを表し、〈~た〉と訳します。
よろしう詠みたりと思ふ歌を、人のもとに遣りたるに、返しせぬ。(枕)
〈上手に詠んだと思う歌を、人のところに贈ったのに、返事がこない(のは興ざめである)。〉
五十の春を迎へて、家を出で、世を背けり。(方丈)
〈五十歳の春を迎えて、家を出て、出家した。〉
(二)存続
存続は、現在もある状態が続いていることを表し、〈~ている・~てある〉と訳します。
「たり・り」の基本的な意味は、存続です。
紫だちたる雲の細くたなびきたる。(枕)
〈紫がかっている(た)雲が細くたなびいている(のが趣がある)。〉
道知れる人もなくて、惑ひ行きけり。(伊勢)
〈道を知っている人もいなくて、迷いながら行った。〉
「たり・り」が完了と存続のどちらであるかを見分けるときは、とりあえず存続で訳してみましょう。
〈~ている・~てある〉で訳すことができる場合は存続を表し、そうでない場合は完了〈~た〉を表すと考えます。
「たり」は、接続助詞「て」+ラ変動詞「あり」という形が変化してできた語です。
(例)て+あり=てあり(teari)
(例)↓たり(tari)
また、「り」は、動詞の連用形にラ変動詞「あり」が付いた形が変化して、それから独立してできた語です。
(例)咲き+あり=咲きあり(sakiari)
(例)↓咲けり(sakeri)↓咲け+り
「たり・り」の基本的な意味が存続であることや、活用が「あり」と同じラ変型(後述)であることは、このような成り立ちに由来します。
また、「たり」が連用形接続であるのは接続助詞「て」が連用形に付くからであり、「り」が四段・サ変動詞のエ段の活用語尾に付くことも、上のような成り立ちから理解することができます。
「たり・り」の活用
〔表〕「たり・り」の活用表
| 基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| たり | たら | たり | たり | たる | たれ | たれ |
| り | ら | り | り | る | れ | れ |
「たり・り」の接続
「たり」と「り」は、それぞれ接続のしかたが異なります。
(一)「たり」の接続
「たり」は、動詞や動詞型の活用をする助動詞の連用形に付きます。
ただし、ラ変型の活用語には付きません。
(二)「り」の接続
「り」は、サ変動詞の未然形または四段動詞の已然形に付きます。それら以外に付くことはありません。
たとえば、四段活用の動詞の「書く」に「たり」が付くときは連用形「書き」に付きますが、「り」が付くときは已然形「書け」に付きます。
書く+たり↓書きたり
書く+り↓書けり
完了の助動詞「つ・ぬ・たり・り」のうち、「り」だけは接続のしかたが特殊です。
「り」の接続は、サ変動詞未然形・四段動詞已然形=「さみしい」と覚えましょう。