■ 謙譲語の形
① 謙譲の本動詞
(例) おほやけに御文奉り給ふ。<(かぐや姫は)天皇にお手紙を差し上げなさる。>
② 動詞+謙譲の補助動詞
(例) 竹の中より見つけきこえたりしかど <竹の中からお見つけしたけれども>
■ 謙譲の動詞一覧
謙譲語は、動作を受ける人に対して敬意を表す言葉である。➡敬語とその種類
謙譲語には、次の二つの形がある。
① 謙譲の本動詞
② 動詞+謙譲の補助動詞
(1) 謙譲の本動詞
動詞の中には、動作を表すだけでなく謙譲の意味をも含むものがある。そのような動詞を謙譲の本動詞という。
いみじく静かに、おほやけに御文奉り給ふ。(竹取)
<(かぐや姫は)…天皇にお手紙を差し上げなさる。>
※ <差し上げる>という動作の受け手である天皇に対して、作者が敬意を表している。
・たてまつる(奉る)= ①差し上げる(「与ふ」の謙譲語)、②参上させる(「遣る」の謙譲語)、③召し上がる(「飲む・食ふ」の尊敬語)、④お召しになる(「着る」の尊敬語)、⑤お乗りになる(「乗る」の尊敬語)、⑥お~する(謙譲の補助動詞)
(2) 動詞+謙譲の補助動詞
補助動詞とは、動詞などに付いて意味を付け加える動詞をいう。
謙譲の補助動詞は、動作を表す意味はなく、謙譲の意味だけを付け加える。<お~する(申し上げる)・~いたす>などと訳す。
「竹の中より見つけきこえたりしかど」(竹取)
<「竹の中から(かぐや姫を)お見つけしたけれども」>
※ <見つける>という動作の受け手であるかぐや姫に対して、話者(翁)が敬意を表している。
・きこゆ(聞こゆ)= ①聞こえる、②うわさされる、③申し上げる・手紙を差し上げる・お願い申し上げる(「言ふ」の謙譲語)、④お~する(謙譲の補助動詞)
謙譲の本動詞・補助動詞の主なものとその訳し方を、次に一覧表で示しておく。
これらの謙譲の動詞と訳語をセットにしてしっかりと覚えよう。
【表】謙譲の本動詞
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| 謙譲語 | 訳語 | ふつうの語 | 
|---|---|---|
| たまはる(賜る・給る) | いただく | 受く | 
| まうづ(詣づ) | 参上する・伺う | 行く・来 | 
| まゐる(参る)* | ||
| 差し上げる | ||
| まゐらす(参らす) | 与ふ | |
| たてまつる(奉る)* | ||
| まかる(罷る) まかづ(罷づ) | (高貴な人の所から)退出する | 去る・出づ | 
| きこゆ(聞こゆ) きこえさす(聞こえさす) まうす(申す) | 申し上げる | 言ふ | 
| そうす(奏す)⁑ | (天皇・上皇に)申し上げる | 言ふ | 
| けいす(啓す)⁑ | (皇后・皇太子に)申し上げる | 言ふ | 
| うけたまはる(承る) | お聞きする・お受けする | 聞く・受く | 
| はべり(侍り) さぶらふ(候ふ)⁂ | (高貴な方のおそばに)お仕えする・控える | あり・居り | 
| つかうまつる(仕うまつる) | お仕え申し上げる | 仕ふ | 
| (何かを)して差し上げる・いたす | す | 
* これらの語には、尊敬語としての用法もある。➡注意すべき敬語動詞
⁑ これらの語は、使う相手が決まっていて、絶対敬語と呼ばれる。➡注意すべき敬語動詞
⁂ 「候ふ」の読み方は時代によって違う。中古(平安時代)は「さぶらふ」、中世(鎌倉時代)は「さうろふ」。
「まゐる」「つかうまつる」には、「す」の謙譲語の用法がある。
たとえば、「御格子まゐる」で<格子をお上げする(お下げする)>という意味になり、「歌つかうまつる」で<歌をお聞かせする>という意味になる。
*
【表】謙譲の補助動詞
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| 謙譲語 | 訳語 | 
|---|---|
| きこゆ(聞こゆ) きこえさす(聞こえさす) たてまつる(奉る) まゐらす(参らす) まうす(申す) | お~する(申し上げる) ~いたす | 
| たまふ(給ふ)[下二段]* | ~ております | 
* 四段活用の「たまふ(給ふ)」は尊敬語。➡注意すべき敬語動詞
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