「まし」
要点確認
「まし」の意味
反実仮想〈もし~だったなら、~だろうに〉現実に反する仮想にもとづく推量。
(例)世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし〈もし世の中にまったく桜がなかったなら、春の人の心はおだやかだろうに〉
この用法は、仮定条件〔~ましかば・~ませば・~せば・~ば〕をともなう。
ためらいの意志〈~(よ)うかしら〉
(例)これに何を書かまし。〈これに何を書こうかしら。〉
「まし」の活用
・「まし」の活用……特殊型
| 基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| まし | ませ ましか | ○ | まし | まし | ましか | ○ |
「まし」の接続
・「まし」の接続……未然形接続
解説
「まし」の意味
「まし」は、推量の助動詞で、次のような意味を持ちます。
(一)反実仮想
反実仮想とは、現実に反することを仮に想定して、それをもとに推量することです。
「まし」が反実仮想を表すのは仮定条件とあわせて用いられる場合であり、〈もし~だったなら、~だろうに〉などと訳します。
世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし (古今)
〈もし世の中にまったく桜がなかったなら、春の人の心はおだやかだろうに〉
※「世の中に桜がまったくない」という現実に反する仮想をもとにして、「春の人の心はおだやかだろう」と推量しています。(現実には、世の中には桜があるので人の心が落ち着かないことを意味します。)
反実仮想を表す形として、次の四つを押さえておきましょう。
反実仮想の構文
①~ましかば、~まし
②~ませば、~まし
③~せば、~まし
④未然形+ば、~まし
「ましかば」……「まし」の未然形(已然形)+「ば」。
「ませば」……「まし」の未然形+「ば」。
「せば」……「き」の未然形+「ば」。
「まし」の意味として、反実仮想と並んで反実希望が挙げられることもあります。
反実希望は、実現不可能なことをあえて希望することを表し、〈~たらよいのに〉などと訳します。
(例)見る人もなき山里の桜花ほかの散りなむのちぞ咲かまし (古今)
〈……ほかの花が散ってしまったあとで咲いたらよいのに〉
(二)ためらいの意志
ためらいの意志は、〈~(よ)うかしら〉などと訳します。
この用法は、疑問語(「何・や」など)をよくともないます。
これに何を書かまし。(枕)
〈これに何を書こうかしら。〉
右のほか、「まし」には、推量〈~だろう〉の意味もあります。
(例)うららかに言ひ聞かせたらんは、おとなしく聞こえなまし。(徒然)
〈……きっと穏やかに聞こえるだろう。〉
「まし」の活用
「まし」は、特殊な活用のしかたになります(特殊型)。
〔表〕「まし」の活用表
| 基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| まし | ませ ましか | ○ | まし | まし | ましか | ○ |
「まし」の接続
「まし」は、活用語の未然形に付きます。