「けむ」
要点確認
「けむ」の意味
過去推量〈~ただろう〉過去の事柄についての推量。
(例)難波田舎と言はれけめ〈難波は田舎であると言われただろう〉
過去の原因推量〈どうして~たのだろう・~たのだろう〉過去の事実についての原因・理由の推量。
(例)夕べは秋となに思ひけむ〈……とどうして思ったのだろう〉
(例)京や住み憂かりけむ〈京が住みづらかったのだろうか〉
過去の伝聞・婉曲〈~たとかいう・~たような〉
(例)君が濡れけむあしひきの〈あなたが濡れたとかいう……〉
(例)向かひゐたりけむありさま〈向かい合っていた(ような)有様は〉
「けむ」の活用
・「けむ」の活用……四段型
| 基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| けむ (けん) | ○ | ○ | けむ (けん) | けむ (けん) | けめ | ○ |
「けむ」の接続
・「けむ」の接続……連用形接続
解説
「けむ」の意味
「けむ」は、推量の助動詞です。
「む」(未来推量)や「らむ」(現在推量)と違って、過去の事柄についての推量を表します。
(一)過去推量
過去推量は、過去の事柄についてそうだっただろうと推量することであって、〈~ただろう〉と訳します。
昔こそ難波田舎と言はれけめ今は都引き都びにけり(万葉)
〈昔は難波は田舎であると言われただろう(が、)……〉
※「昔は難波は田舎であると言われた」は、推量された過去の事柄です。
(二)過去の原因推量
過去の原因推量は、過去の事実についてその原因・理由を推測することです。
これには、原因・理由を示さない場合と原因・理由を示す場合とがあります。
原因・理由を示さない場合は、疑問詞をともない、〈どうして~たのだろう〉と訳します。
見渡せば山もとかすむ水無瀬川夕べは秋となに思ひけむ (新古今)
〈…夕べ(の趣)は秋(にかぎる)とどうして思ったのだろう。〉
※「夕べは秋にかぎると思った」という過去の事実について、どうしてそうだったのだろうかと原因を推量しています。
原因・理由を示す場合は、〈たのだろう〉と訳します。
京や住み憂かりけむ、東の方に行きて (伊勢)
〈京が住みづらかったのだろうか……〉
※「東国の方へ行った」理由を、「京が住みづらかった」のだろうと推量しています。
(三)過去の伝聞・婉曲
過去の伝聞は、過去の事柄を他人から伝え聞いたこととして述べることで、〈~たとかいう〉などと訳します。
婉曲は、断定をさけて遠回しに言うことです。一般には〈~たような〉と訳しますが、無理に訳さないこともあります。
伝聞・婉曲の「らむ」は、連体形になります。連体形は、直後に名詞がくるか、または名詞を補うことができます。
吾を待つと君が濡れけむあしひきの山のしづくに成らましものを (万葉)
〈私をまってあなたが濡れたとかいう……〉
向かひゐたりけむありさま、さこそ異様なりけめ。(徒然)
〈(医者と)向かい合っていた(ような)有様は……〉
「けむ」の活用
「けむ」の活用は、「む」の活用に「け」を付け加えた形になります。🔗「む」
〔表〕「けむ」の活用表
| 基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| けむ (けん) | ○ | ○ | けむ (けん) | けむ (けん) | けめ | ○ |
「けむ」は、中世(鎌倉時代)から「けん」と表記されるようになりました。
「けむ」の接続
「けむ」は、活用語の連用形に付きます。