「らむ」
要点確認
「らむ」の意味
現在推量〈今ごろ~ているだろう〉目の前にない現在の事柄の推量。
(例)子泣くらむ〈今ごろ子どもが泣いているでしょう。〉
現在の原因推量〈(どうして)~ているのだろう・~からだろう〉現在目の前にある事実についての原因・理由の推量。
(例)などほととぎす声絶えぬらむ〈どうしてホトトギスの鳴き声は絶えてしまっているのだろう。〉
(例)雲のあなたは春にやあるらむ〈雲の向こうは春であるからだろうか。〉
現在の伝聞・婉曲〈~という・~ような〉
(例)人の言ふらむことをまねぶらむよ。〈人が言うようなことをまねするという(話だ)よ。〉
「らむ」の活用
・「らむ」の活用……四段型
| 基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| らむ (らん) | ○ | ○ | らむ (らん) | らむ (らん) | らめ | ○ |
「らむ」の接続
・「らむ」の接続……終止形接続(ラ変型活用語には連体形接続)
解説
「らむ」の意味
「らむ」は、推量の助動詞です。
「む」(未来推量)や「けむ」(過去推量)と違って、現在についての推量を表します。
(一)現在推量
現在推量は、自分の目の前にない事柄について現在そうなっているであろうと推量することであって、〈今ごろ~ているだろう〉と訳します。
憶良らは今はまからむ子泣くらむそれその母も吾を待つらむぞ (万葉)
〈……(家では)今ごろ子どもが泣いているでしょう。その子の母も私を待っているでしょう。〉
※「子が泣いている」や、「その母も私を待っている」というのは、現在の目の前にない事柄についての推量です。
(二)現在の原因推量
現在の原因推量は、目の前にある現在の事実についてその原因・理由を推量することです。これには、二つの場合があります。
一つは、原因・理由が示されていない場合であって、〈どうして~ているのだろう〉と訳します。「など・いかに」などの疑問語と合わせて用いられます。
やどりせし花橘も枯れなくになどほととぎす声絶えぬらむ (古今)
〈……どうしてホトトギスの鳴き声は絶えてしまっているのだろう。〉
※「ホトトギスの鳴き声が絶えた」のは、目の前にある現在の事実です。その事実について、話し手がどうしてなのだろうかと原因を推量しています。
もう一つは、原因・理由が示されている場合であって、〈~からであろう〉などと訳します。
冬ながら空より花の散りくるは雲のあなたは春にやあるらむ (古今)
〈……雲の向こうは春であるからだろうか。〉
※「冬なのに空から花〔=雪〕が散ってくる」原因を、「雲の向こうは春だからだろう」と推量しています。
(三)現在の伝聞・婉曲
伝聞は、現在の事柄を他人から伝え聞いたこととして述べることで、〈~という〉などと訳します。
婉曲は、断定をさけて遠回しに言うことです。一般には〈~ような〉と訳しますが、無理に訳さないこともあります。
伝聞・婉曲の「らむ」は、連体形になります。連体形は、直後に名詞がくるか、または名詞を補うことができます。
鸚鵡、いとあはれなり。人の言ふらむことをまねぶらむよ。(古今)
〈……人が言うようなことをまねするという(話だ)よ。〉
「らむ」の活用
「らむ」の活用は、「む」の活用に「ら」を付け加えた形になります。🔗「む」
〔表〕「らむ」の活用表
| 基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| らむ (らん) | ○ | ○ | らむ (らん) | らむ (らん) | らめ | ○ |
「らむ」は、中世(鎌倉時代)から「らん」と表記されるようになりました。
「らむ」の接続
「らむ」は、活用語の終止形に付きます。
ただし、ラ変型活用語に付く場合は、その終止形ではなく、連体形に付きます。
ラ変型活用語とは、ラ変動詞、形容詞、形容動詞、ラ変型の助動詞をいいます。