「す・さす・しむ」

要点確認
「す・さす・しむ」の意味
使役しえき〈~せる・~させる〉
(例)預けて養はす。〈預けて育てさせる。〉
尊敬〈お~になる・お(ご)~あそばす〉
(例)めでさせ給ふ。〈お褒めになる。〉
「す・さす・しむ」の活用
・「す・さす・しむ」の活用……下二段型
基本形未然形連用形終止形連体形已然形命令形
すせせすするすれせよ
さすさせさせさすさするさすれさせよ
しむしめしめしむしむるしむれしめよ
「す・さす・しむ」の接続
㈠「す」の接続……四段・ナ変・ラ変動詞の未然形接続
㈡「さす」の接続……右以外の動詞の未然形接続
㈢「しむ」の接続……動詞の未然形接続
「す・さす」と「しむ」の違い
・「す・さす」は和文体、「しむ」は漢文訓読体で使われる。
解説

「す・さす・しむ」の意味

「す・さす・しむ」は、いずれも使役と尊敬を表します。

(一)使役

使役しえきは、他の者に何かをさせることを表し、〈~せる・~させる〉と訳します。
「す・さす・しむ」の直後に尊敬を表す語(「給たまふ」「おはします」など)がない場合、つねに使役の意味になります。
妻めの嫗おうなに預あづけて養はす。(竹取)
〈……(かぐや姫を)預けて育てさせる。〉
御格子みかうしあげさせて、御簾みすを高くあげたれば、笑はせ給たまふ。(枕)
〈(女房に)御格子を上げさせて…〉
愚かなる人の目をよろこばしむる楽しみ、またあぢきなし。(徒然)
〈愚かな人の目を喜ばせる楽しみも……〉

(二)尊敬

尊敬そんけいは、〈お~になる・お(ご)~あそばす〉と訳します。
「す」「さす」「しむ」は、本来、使役を表しますが、身分の高い人の動作に付くことが多く、そこから尊敬の意味が生じました。
「す・さす・しむ」が尊敬を表すのは直後に尊敬を表す語をともなう形になるときだけであり、その場合、敬意の高い二重尊敬になります。
夜の御殿おとどに入らせ給ひても、まどろませ給ふことかたし。(源氏)
〈(帝は)ご寝所にお入りになっても、うとうととお眠りあそばすことも難しい。〉
語りいでさせ給ふを、上も聞しめし、めでさせ給ふ。(枕)
〈(定子中宮様が)お話しになるのを、天皇もお聞きになり、お褒めになる。〉
おほやけも行幸ぎやうかうせしめ給ふ。(大鏡)
〈天皇もお出かけになる。〉
「す・さす・しむ」の意味の見分け方を知っておきましょう。
①まず、「す・さす・しむ」の直後に尊敬語がなければ、使役の意味です。
②次に、「す・さす・しむ」の直後に尊敬語(「給ふ」「おはします」など)があれば、使役と尊敬のどちらも可能性があります。この場合、文脈から判断します。
その際、「~(誰々)に」というように、使役をさせる相手が示されているか、または、補うことができるときは、使役の意味になります。
(例)御琴召して、内にも、この方に心得たる人びとに弾かせたまふ。(源氏)
〈この方面に精通した人(女房)たちにお弾かせになった。〉
なお、「せ給ふ・させ給ふ」という形は頻出です。

「す・さす・しむ」の活用

「す・さす・しむ」は、いずれも動詞の下二段活用と同じ活用をします(下二段型)。🔗動詞ー下二段活用
〔表〕「す・さす・しむ」の活用表
基本形未然形連用形終止形連体形已然形命令形
すせせすするすれせよ
さすさせさせさすさするさすれさせよ
しむしめしめしむしむるしむれしめよ

「す・さす・しむ」の接続

「す・さす・しむ」は、いずれも動詞の未然形に付きます。
ただし、「す」と「さす」接続する動詞の種類が次のように異なります。
「す・さす・しむ」の接続
・「る」の接続……四段・ナ変・ラ変動詞の未然形に付く。
・「らる」の接続……右以外の動詞の未然形に付く。

「す・さす」と「しむ」の違い

「す・さす」と「しむ」は、それぞれの語が用いられる文体に違いがあります。
「す・さす」は和文体の文章で用いられ、「しむ」は漢文訓読体の文章(軍記物・説話物)で多く使われます。