「る・らる」
要点確認
「る・らる」の意味
受身〈~れる・~られる〉
(例)物に襲はるる心地して。〈物の怪に襲われる気持ちがして〉
可能〈~ことができる〉
(例)つゆまどろまれず〈まったく眠ることができず〉
自発〈自然と~れる・思わず~てしまう〉
(例)都のみぞ思ひやらるる。〈都のことばかりが自然と思い出される。〉
尊敬〈~なさる・お~になる〉
(例)家司などに仰せらる。〈家司などに命じなさる。〉
「る・らる」の活用
・「る・らる」の活用……下二段型
| 基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| る | れ | れ | る | るる | るれ | れよ |
| らる | られ | られ | らる | らるる | らるれ | られよ |
注命令形に自発・可能の意味はない。
「る・らる」の接続
㈠「る」の接続……四段・ナ変・ラ変動詞の未然形接続
㈡「らる」の接続……右以外の動詞の未然形接続
解説
「る・らる」の意味
「る・らる」には、受身・可能・自発・尊敬の四つの意味があります。
(一)受身
受身は、他から動作を受けることを表し、〈~れる・~られる〉と訳します。
受身の「る・らる」の前には、「~(誰々・何々)に」という語句があったり、補うことができたりします。
物に襲はるる心地して、驚き給へれば、火も消えにけり。(源氏)
〈物の怪に襲われるような気持ちがして…〉
問いつめられて、え答へずなり侍りつ。(徒然)
〈(子供に)問い詰められて……〉
(二)可能
可能は、〈~ことができる〉と訳します。
可能の「る・らる」は、中古(平安時代)までは、かならず打消(反語)を表す語とともに使われます。
知らぬ人の中にうち臥して、つゆまどろまれず(更級)
〈……まったく眠ることができず〉
変りゆくかたちありさま、目も当てられぬこと多かり。(方丈)
〈次第に変わってゆく容貌は、目も当てられないことが多くある〉
中世(鎌倉時代=『徒然草』)になると、肯定表現のままで可能を表すようになります。
(例)家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。(徒然)
(例)〈家の造り方は、夏を中心に考えたほうがよい。冬は、どんな所にでも住むことができる。〉
(三)自発
自発は、動作が自然に起こる・無意識にそうなってしまうことを表し、〈自然に~(ら)れる・思わず~てしまう〉と訳します。
自発の「る」「らる」は、心情や知覚を表す動詞に付きます(「思ふ」「嘆く」「見る」「眺ながむ」など)。
今日は都のみぞ思ひやらるる。(土佐)
〈今日は、都のことばかりが自然と思い出される。〉
つれづれと空ぞ見らるる思ふ人天降り来むものならなくに(和泉)
〈ものさびしくて思わず空を眺めてしまう。思う人が天から降りてくるものではないのに。〉
(四)尊敬
尊敬は、〈~なさる・お~になる〉と訳します。
とくに主語が貴人(身分の高い人)であるときは、「る・らる」は尊敬であることが多くなります。
御門、なほめでたく思し召さるる事せき止めがたし。(竹取)
〈帝は、やはり(かぐや姫を)すばらしくお思いになることを抑えることができない。〉
繕ふべき所、所の預かり、今加へたる家司などに仰せらる。(源氏)
〈(源氏の君は)修繕すべきところを、ここの預かり人や、新たに任命した家司などに命じなさる。〉
「る・らる」の四つの意味には、それぞれ次のような特徴があります。四つの意味を見分ける際の手がかりにしましょう。
①受身……前に「~(誰々・何々)に」という語句があったり補えたりする。
②可能……打消(反語)の語をともなう。
③自発……心情や知覚を表す動詞に付くことが多い。
④尊敬……主語が貴人である。
「る・らる」の活用
〔表〕「る・らる」の活用表
| 基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| る | れ | れ | る | るる | るれ | れよ |
| らる | られ | られ | らる | らるる | らるれ | られよ |
なお、命令形が可能または自発の意味で使われることはありません。
「る・らる」の接続
「る」と「らる」は、どちらも動詞の未然形に付きます。
しかし、接続する動詞の種類が次のように異なります。
「る・らる」の接続
・「る」の接続……四段・ナ変・ラ変動詞の未然形に付く。
・「らる」の接続……右以外の動詞の未然形に付く。