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注意すべき敬語法

要点のまとめ

■ 二重尊敬(最高敬語)

二重尊敬(最高敬語)……「尊敬語+尊敬語」の形で動作主に最高の敬意を表す。

(例) めでさせ給ふ。<(天皇が)おほめになる。>

■ 二方面への敬意(二者敬語)

二方面への敬意(二者敬語)……「謙譲語+尊敬語」の形で話し手(作者)が動作をする人とそれを受ける人の両方に敬意を表す。

(例) 文のことなど奏し給ふに <(大納言が)漢詩文のことなど天皇に申し上げなさって>

■ 自敬表現

自敬じけい表現……会話文で、高貴な人が自分に対して敬語を用いる。

(例) 「などか賜はせざらむ」<「どうして(私が)お与えにならないことがあろうか」>

解説

1 二重尊敬(最高敬語)

「尊敬語+尊敬語」の形は、話し手(作者)が動作をする人に対して最高の敬意を表すときに用いられる。これを二重尊敬(最高敬語)という。➡尊敬語

二重尊敬は、天皇・皇后(中宮)などの特別に身分の高い人物に対して使われる。これは、主語を考える大きなヒントになる。ただし、会話文の場合には、高貴な人物でなくても使われることがあるので注意すること。

上うへも聞こし召し、めでさせ給ふ。(枕)

<天皇もお聞きになり、おほめになる。>

上の例文で、「させ給ふ」は、尊敬の助動詞(「さす」の連用形「させ」)と尊敬の補助動詞(「給ふ」の終止形)がつらなった形の二重尊敬である。

二重尊敬は、尊敬の助動詞「す」「さす」(連用形は「せ」「させ」)+尊敬の補助動詞「給ふ」「おはします」の形が多いので、「(さ)せ給ふ」「(さ)せおはします」の形で覚えておこう。(ただし、この形であっても、「せ」「させ」が《使役》を表すときもあるので注意。➡「す・さす・しむ」)

アドバイス

「せ給ふ」「させ給ふ」の形の助動詞「せ・させ」は、《尊敬》と《使役》のどちらの可能性もある。文脈で判断しよう。

似たような形に「れ給ふ」「られ給ふ」(「る・らる」+「給ふ」)があるが、この場合の「れ・られ」は《尊敬》では使われない。➡「る・らる」

2 二方面への敬意(二者敬語)

「謙譲語+尊敬語」の形は、話し手(作者)が動作をする人とそれを受ける人の両方に敬意を表すときに用いられる。これを二方面への敬意(二者敬語)という。➡謙譲語 ➡尊敬語

大納言殿参り給ひて、文のことなど奏し給ふに (枕)

<大納言殿が参上なさって、漢詩文のことなどを天皇に申し上げなさっているうちに>

上の例で、「参り給ひ」と「奏し給ふ」はどちらも、謙譲の本動詞(「参る」「奏す」)と尊敬の補助動詞「給ふ」とがつらなった形である。

謙譲語の部分は作者から天皇への敬意を表し(大納言からの敬意ではないことに注意)、尊敬語の部分は作者から「大納言」への敬意を表している。つまり、作者からの敬意が二人の人物に向けられている。

もっと知る

尊敬語・謙譲語・丁寧語が重ねて使われる場合、【謙譲+尊敬+丁寧】の順番になる。

たとえば、「給ふ」(尊敬語)と「奉る」(謙譲語)であれば、【謙譲+尊敬】の順で「奉り給ふ」になる。「参る」(謙譲語)と「侍り」(丁寧語)であれば、【謙譲+丁寧】の順で「参り侍り」だ。

3 自敬表現

会話文では、特に身分の高い人が自分に対して敬語を用いることがある。これを自敬表現という。(自己敬語や自尊敬語とよぶこともある。)

これは、作者の敬意が会話文にまで入り込んだものと考えられている。

「この女もし奉たてまつりたるものならば、翁に冠を、などか賜たまはせざらむ」(竹取)

<(帝がおっしゃるには)「この女〔=かぐや姫〕をもし(私のもとに)差し上げたならば、翁に冠〔=貴族の地位〕をどうして(私が)お与えにならないことがあろうか」>

上の例文で、「奉り(奉る)」は謙譲語で、「賜はせ(賜はす)」は尊敬語である。➡謙譲語 ➡尊敬語

いずれも帝(天皇)に敬意を表しており、それが帝の発言中にあるから、帝が自分に対して敬語を用いる表現になっている。

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