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注意すべき敬語動詞

要点のまとめ

■ 「給ふ」

たまふ(給ふ)……尊敬語(四段)と謙譲語(下二段)の用法がある。

(例) 禄たまへ 四段 りけり。<褒美をお与えになった。>〔尊敬・本動詞〕

(例) 入り給ひ四段にけり。<お入りになってしまった。>〔尊敬・補助動詞〕

(例) 聞き給ふる 下二段 。<(私は)聞いております。>〔謙譲・補助動詞〕

■ 「奉る・参る」

たてまつる(奉る)・まゐる(参る)……謙譲語と尊敬語の用法がある。

(例) 御薬奉れ。<お薬を召し上がれ。>〔尊敬・本動詞〕

(例) 物もつゆばかり参らず <食事もほんの少しも召し上がらない>〔尊敬・本動詞〕

■ 「侍り・候ふ」

はべり(侍り)・さぶらふ(候ふ)……謙譲語と丁寧語の用法がある。

(例) 上に候ふ御猫は <天皇にお仕えする御猫は>〔謙譲・本動詞〕

(例) あはれと思ふ人侍りき。<愛おしいと思う人がおりました。>〔丁寧・本動詞〕

(例) 思ひ嘆き侍るなり。<嘆き悲しんでございます。>〔丁寧・補助動詞〕

■ 「奏す・啓す」(絶対敬語)

奏そうす・啓けいす……皇室の人にだけ用いる(絶対敬語)。

(例) 答へて奏す <答えて天皇に申し上げる>

(例) ありつるやう啓すれば <あったようすを(中宮に)申し上げると>

解説

1 「給ふ」

「たまふ(給ふ)」には、四段活用と下二段活用の2種類がある。

四段活用(は・ひ・ふ・ふ・へ・へ)の場合は尊敬語であり、下二段活用(へ・へ・〇・ふる・ふれ・〇)の場合は謙譲語である。➡尊敬語 ➡謙譲語

尊敬語には本動詞と補助動詞があるが、謙譲語には補助動詞しかない。

「給ふ」の用法

① 尊敬の本動詞<お与えになる>……四段(は・ひ・ふ・ふ・へ・へ)

② 尊敬の補助動詞<お~になる・~なさる>……四段

③ 謙譲の補助動詞<~ております>……下二段(へ・へ・〇・ふる・ふれ・〇)

使ひに禄ろくたまへりけり。(伊勢)〔四段=尊敬・本動詞〕

<使いの者にご褒美をお与えになった。>

「心地もなやましくなむ」とて入り給たまひにけり。(源氏)〔四段=尊敬・補助動詞〕

<…(部屋の中に)お入りになってしまった。>

心ゆかぬやうになむ、聞き給たまふる。(源氏)〔下二段=謙譲・補助動詞〕

<…(私は)聞いております。>

アドバイス

下二段活用(謙譲語)の「たまふ」は、補助動詞の用法しかなく、また、使用する場面がほぼ決まっている。

すなわち、①会話文・消息文(手紙文)中での、②話し手(書き手)自身の知覚動作(「思ふ・見る・聞く」など)に付く。

2 「奉る・参る」

「たてまつる(奉る)」と「まゐる(参る)」は、本来、謙譲語であるが、尊敬語としての用法もある。➡謙譲語 ➡尊敬語

「たてまつる(奉る)」は、謙譲語にだけ補助動詞の用法がある。

「奉る」の用法

① 謙譲の本動詞(差し上げる)

② 謙譲の補助動詞(お~申し上げる)

③ 尊敬の本動詞(召し上がる・お召しになる・お乗りになる)

酒、よき物たてまつれり。(伊勢)〔謙譲・本動詞〕

<酒や上等な食べ物を差し上げた。>

寺に尊たふときわざする、見せ奉たてまつらむ。(大和)〔謙譲・補助動詞〕

<…お見せ申し上げよう。>

壺つぼなる御薬奉れ。(竹取)〔尊敬・本動詞〕

<壺にあるお薬を召し上がれ。>

*

「まゐる(参る)」には、補助動詞の用法がない。

「参る」の用法

①謙譲の本動詞(参上する・差し上げる)

②尊敬の本動詞(召し上がる)

親王みこに、うまの頭かみ、大御酒おほみき参まゐる。(源氏)〔謙譲・本動詞〕

<親王に馬の頭がお酒を差し上げる。>

心地もまことに苦しければ、物もつゆばかり参らず (源氏)〔尊敬・本動詞〕

<…食事もほんの少しも召し上がらない>

3 「侍り・候ふ」

「はべり(侍り)」と「さぶらふ(候ふ)」は、謙譲語と丁寧語の二つの用法がある。➡謙譲語 ➡丁寧語

どちらも、丁寧語にだけ補助動詞の用法がある。

「侍り・候ふ」の用法

①謙譲の本動詞((高貴な方のそばに)お仕えする・控える)

②丁寧の本動詞(あります・おります・ございます)

③丁寧の補助動詞(~ます・~(で)ございます)

上に候さぶらふ御猫は、かうぶり給はりて (枕)〔謙譲・本動詞〕

<天皇にお仕えする御猫は、…>

あはれと思ふ人侍はべりき。(源氏)〔丁寧・本動詞〕

<愛おしいと思う人がおりました。>

この春より思ひ嘆き侍るなり。(竹取)〔丁寧・補助動詞〕

<この春から嘆き悲しんでございます。>

4 「奏す・啓す」(絶対敬語)

「奏そうす」「啓けいす」は、皇室の人にだけ用いる尊敬語である。➡尊敬語

これらの敬語が使われていたら、その相手は決まっている。そのため、絶対敬語とよばれる。

絶対敬語

奏そうす……《天皇・上皇に》申し上げる。

啓けいす……《皇后(中宮)・皇太子に》申し上げる。

ゐておはしまさむとするに、かぐや姫答へて奏す (竹取)

<…かぐや姫は答えて天皇に申し上げる>

御前おまへにまゐりて、ありつるやう啓すれば (枕)

<…あったようすを(中宮に)申し上げると>

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