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格助詞(2)「の・が」

要点のまとめ

■ 「の」の用法

① 連体修飾語(連体格)<~の>

(例) 月の都の人なり。<月の都の人です。>

② 主語(主格)<~が>

(例) 女子の、もろともに帰らねば <女の子が一緒に帰らないので>

③ 同格<~で・~であって>

(例) いと清げなる僧の、黄なる地の袈裟着たるが来て <たいそうこぎれいな僧で、黄色い地のけさを着た僧が出てきて>

④ 体言の代用(準体格)<~のもの>

(例) 唐のはさらなり <中国のものは言うまでもない>

⑤ 比喩(連用格)<~のように>

(例) 中将、のうなづく。<頭中将は、いつものようにうなづく。>

■ 「が」の用法

① 連体修飾語(連体格)<~の>

(例) 君がため <あなたのために>

② 主語(主格)<~が>

(例) 犬君が逃がしつる。<犬君が逃がしてしまった。>

③ 同格<~で・~であって>

(例) いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。<それほど高貴な家柄ではない方で、特別に(帝の)寵愛を受けていらっしゃる方がいた。>

④ 体言の代用(準体格)<~のもの>

(例) 大伴黒主がなり。<大友黒主のものである。>

解説

1 「の」の用法

格助詞「の」には、次のようにいくつかの用法があります。

「の」の用法

① 連体修飾語(連体格)

② 主語(主格)

③ 同格

④ 体言の代用(準体格)

⑤ 比喩(連用格)

(1) 連体修飾語(連体格)

「の」を含む文節が後の体言を修飾する用法です。<~の>と訳します。

月の都の人なり。(竹取)

<月の都の人です。>

※ 「月の」は「都の」にかかる連体修飾語であり、「都の」は「人なり」にかかる連体修飾語です。

(2) 主語(主格)

「の」を含む文節が、後の文節(述語)にかかる主語であることを表す用法です。<~が>と訳します。

この家にて生まれし女子の、もろともに帰らねば、いかがは悲しき。(伊勢)

<この家で生まれた女の子が一緒に帰らないので、…>

※「女子の」は、「帰らねば」(述語)にかかる主語です。

(3) 同格

「の」を挟む前後の語句が同一の人・物についての説明であることを表す用法です。<~で・~であって>と訳します。

後の語句を訳すときには、「の」の直前の語(体言)を連体形の語の直後に補います。

いと清きよげなる僧の、黄なる地ぢの袈裟けさ着たるが来て(更級)

<たいそうこぎれいな僧で、黄色い地のけさを着た僧が出てきて>

※ 「いと清げなる僧」と「黄なる地の袈裟着たる(僧)」とで、同じ人物を指しています。

アドバイス

同格の用法は、【体言+の+~連体形】という形をとります。

訳すときには、体言を補って、<体言+で(あって)+~連体形+体言>とします。

【図】同格の用法

同格の用法

(4) 体言の代用(準体格)

体言の代わりとして「の」を用いる用法です。<~のもの>と訳します。

草の花はなでしこ。唐からのはさらなり、大和やまとのもいとめでたし。(枕)

<…中国のもの〔=なでしこ〕は言うまでもない。大和のものもすばらしい。>

(5) 比喩(連用格)

比喩は、<~のように>と訳すことができる用法です。この場合、「の」を含む文節は、用言を修飾します。

中将ちゅうじょう、例のうなづく。(源氏)

<頭中将は、いつものようにうなづく。>

飛ぶ鳥の声もきこえぬ奥山の深き心を人は知らなむ(古今)

<飛ぶ鳥の声も聞こえないほどの奥深い山のように…>

※ 「飛ぶ鳥の声もきこえぬ奥山の」は、「深き」を導く序詞です。

アドバイス

連用格の「の」は、「例の〔=いつものように〕」という形か、あるいは、和歌(とくに序詞)の中で用いられます。

2 「が」の用法

格助詞「が」の用法は、次のとおりです。

「が」の用法

① 連体修飾語(連体格)

② 主語(主格)

③ 同格

④ 体言の代用(準体格)

アドバイス

格助詞「が」の用法は、「の」とほぼ同じです。ただし、比喩(連用格)の用法はありません。

(1) 連体修飾語(連体格)

「が」を含む文節が後の体言を修飾する用法です。<~の>と訳します。

君がため春の野に出いでて若菜わかな摘むわが衣手ころもでに雪は降りつつ(古今)

<あなたのために…そのわたしの袖に…>

(2) 主語(主格)

「が」を含む文節が、後の文節(述語)にかかる主語であることを表す用法です。<~が>と訳します。

雀すずめの子を犬君いぬきが逃がしつる。(源氏)

<雀の子を犬君(召使の名前)が逃がしてしまった。>

(3) 同格

「が」を挟む前後の語句が同一の人・物についての説明であることを表す用法です。<~で>と訳します。

いとやむごとなき際きはにはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。(源氏)

<それほど高貴な家柄ではない方で、特別に(帝の)寵愛を受けていらっしゃる方がいた。>

(4) 体言の代用(準体格)

体言の代わりとして「が」を用いる用法です。<~のもの>と訳します。

この歌はある人いはく、大伴黒主おおとものくろぬしがなり。(古今)

<…大友黒主のもの〔=歌〕である。>

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