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副助詞(2)「だに・さへ・し」

要点のまとめ

■ 「だに」の用法

① 類推るいすい<~さえ>……程度の軽いものを挙げて程度の重いものを推測させる。

(例) 蛍ばかりの光だになし。<蛍ほどの光さえない。(まして、それより大きな光はない。)>

② 最小限の限定<せめて~だけでも>

(例) 声をだに聞かせ給へ。<せめて声だけでも聴かせてください。>

■ 「さへ」の用法

添加てんか<(そのうえ)~までも>

(例) 明日さへ見まく欲しき君かも <そのうえ明日までも会いたいあなただよ。>

■ 「し」の用法

強意(訳出しない)

(例) 花をし見ればもの思ひもなし <この桜の花(娘)を見ていると、なんの心配もない。>

解説

1 「だに」の用法

副助詞の「だに」には、次の二つの用法があります。

(1) 類推るいすい

類推は、程度の軽いものを挙げることによってそれより程度の重いものを推測させることを表し、<~さえ>と訳します。

「(軽いもの)だに」という表現は、言外に「まして(重いもの)は~」という意味を含みます。

光やあると見るに、蛍ほたるばかりの光だになし。(竹取)

< 光があるかと見ると、蛍ほどの光さえない。(まして、それより大きな光はない。)>

※ 「蛍ほどの光」という程度の軽いものを挙げることによって、それより程度の重いもの(大きな光)も同じであることを推測させています。

もっと知る

「だに」と同じように類推の用法をもつ副助詞に、「すら」があります。

夢いめのみに見てすらここだ恋ふる我あはうつつに見てばましていかにあらむ(万葉)

<夢に見るだけでさえこんなにひどく恋しく思う私は、現実に会えばましてどんなであろう。>

類推を表す役割は、上代(奈良時代)には「すら」であったのが、中古(平安時代)には「だに」に移り、さらに中世(鎌倉時代)になると「さへ」に変わっていきます。

現代語では、副助詞の「すら」「さえ」に類推の用法があります。

(2) 最小限の限定

「だに」の後に願望・意志・仮定・命令の語が来る場合、最小限の限定を表し、<せめて~だけでも>と訳します。

我に今一度ひとたび、声をだに聞かせ給へ。(源氏)

<私にいまもう一度、せめて声だけでも聞かせてください。>

アドバイス

「だに」の二つの用法をしっかり押さえておきましょう。

類推の用法は、後に「まして(程度の重いもの)は~」の部分を付け足して考えることができます。

最小限の限定の用法は、願望・意志・仮定・命令を表す語が後に来ます。

2 「さへ」の用法

「さへ」は、添加てんかを表す副助詞です。

添加は、すでにある物事に、さらに別の物事を付け加えることを意味し、<(そのうえ)~までも>と訳します。

一昨日をとつひも昨日きのふも今日けふも見つれども明日さへ見まく欲しき君かも(万葉)

<一昨日も昨日も今日も会ったけれども、そのうえ明日までも会いたいあなただよ。>

3 「し」の用法

「し」は、強意を表す副助詞です。

「し」は、ふつう訳さないで、それを除いても文の意味が通じることが特徴です。

年経ればよはひは老いぬしかはあれど花をし見ればもの思ひもなし(古今)

<年月を重ねたので、自分はすっかり年老いてしまった。そうではあるけれども、この桜の花(娘)を見ていると、なんの心配もない。>

もっと知る

「し」は、上の例文のように、接続助詞「ば」が後に来る形で用いられたり、係助詞が付いた「しも」「しぞ」「しこそ」「しか」の形で用いられたりすることがよくあります。

「しも」は、一語の副助詞として扱われます。

・今日しも端におはしましけるかな。(源氏)

<今日に限って端にいらっしゃったことよ。>

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