要点のまとめ
■ 助動詞「らむ」
(1) 意味
① 現在推量(今ごろは~ているだろう)
② 現在の原因推量((どうして)~のだろうか・(それだから)~のだろう)
③ 現在の伝聞・婉曲(~とかいう・~ような)
(2) 活用 四段型
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
○ | ○ |
らむ (らん) |
らむ (らん) |
らめ | ○ |
(3) 接続 終止形
活用語の終止形に付く。ただし、ラ変型活用語には連体形に付く。
推量の助動詞の一つ「らむ」について、その意味・活用・接続を見ていきましょう。
「らむ」の意味は「けむ」と対照的であり、活用のしかたは「む」「けむ」と同じです。
「らむ」は、基本的に現在の事柄についての推量(~だろう)をあらわす助動詞であり、過去の事柄の推量(~ただろう)をあらわす「けむ」と対照的です。
(1) 現在推量
現在推量は、話し手自身の目の前にない事柄について現在そうなっているであろうと推量する意味です。<今ごろは~ているだろう>と訳します。
【例】憶良らは今はまからむ子泣くらむそれその母も吾を待つらむぞ (万葉)
<――(家では)今ごろ子が泣いているでしょう。その子の母も私を待っているでしょう。>
「子どもが泣いている」というのは、現在話し手(憶良)の目の前で起こっている出来事ではなく、話し手が今ごろはそうしているであろうと想像している事柄です。
(2) 現在の原因推量
現在の原因推量は、目の前にある現在の事実についてその原因・理由を推測するという意味です。これには、次のように二つの場合があります。
① 原因・理由が示されていない場合
「など」「いかに」などの疑問語とともに用いられることが多く、<(どうして)~のだろうか>などと訳します。
【例】やどりせし花橘も枯れなくになどほととぎす声絶えぬらむ (古今)
<――どうしてホトトギスの鳴き声は絶えてしまったのだろうか。>
「ホトトギスの鳴き声が絶えた」というのは、現在話し手の目の前にある事実です。その事実について、話し手がどうしてそうなのだろうかと原因を推量しています。
② 原因・理由が示されている場合
原因・理由を示す部分は接続助詞「ば」をともなうことが多く、<(それだから)~のだろう>などと訳します。
【例】思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを (古今)
<(あの人を)思いながら寝たからあの人を(夢の中で)見たのだろうか――>
「あの人を夢の中で見た」というのは、現在話し手の目の前にある事実です。その事実について話し手が推量する原因が「~ば」の部分に述べられています。
(3) 現在の伝聞・婉曲
伝聞は、一般的な事柄を他人から聞いたこととして述べる意味で、<~とかいう(ことだ)>などと訳します。
婉曲は、物言いを柔らかくするするために推量の言い方をする表現方法です。現代語にするときの一般的な訳し方は<~ような>ですが、それだと不自然になるような場合には無理に訳する必要はありません。
【例】鸚鵡、いとあはれなり。人の言ふらむことをまねぶらむよ。 (古今)
<――人が言うようなことをまねするとかいう話だよ。(前者が婉曲、後者が伝聞)>
伝聞・婉曲の「らむ」は、多くは連体形となります。連体形は、直後に名詞がくるか、または名詞を補うことができる形をとります。
「らむ」は、動詞の四段活用と同じような活用のしかたをします(四段型)。ただし、未然形・連用形・命令形はありません。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
らむ (らん) |
○ | ○ |
らむ (らん) |
らむ (らん) |
らめ | ○ |
「らむ」の活用は、「む」の活用に「ら」をつけ加えたものになります。「けむ」を含めた三つの助動詞の活用をセットにして覚えておくとよいでしょう。
なお、「らむ」は中世(鎌倉時代以降)になってから、「らん」と表記されるようになります。
「らむ」は、活用語の終止形に付きます。
ただし、ラ変型活用語には、その終止形ではなく連体形に付きます。(ラ変型活用語:ラ変動詞、形容詞、形容動詞、ラ変型の助動詞)
「らむ」は、他の助動詞と接続する場合、「つらむ」「ぬらむ」のように「らむ」が最後にくる形になります。「らむ」が他の助動詞の前につくことはありません。
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jao (水曜日, 18 11月 2020)
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