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「まじ」

要点のまとめ

■ 「まじ」の意味

「まじ」は、「べし」の打消である。

① 打消推量<~ないだろう>

(例) …こそ…劣るまじけれ。<劣らないだろう。>

② 打消意志<~ないつもりだ>

(例) 敵の手にはかかるまじ。<敵の手にはかからないつもりだ。>

③ 不可能<~(ことが)できそうにない>

(例) 世にあるまじき心地のしければ <…生きることができそうにない気持ちがしたので>

④ 打消当然・不適当<~はずがない・~べきでない>

(例) 聞き知るまじく思ほえたれども <聞いてわかるはずがないと思われたけれども>

⑤ 禁止<~してはならない>

(例) つかのまも忘るまじきなり。<少しの間も忘れてはならないのである。>

■ 「まじ」の活用

「まじ」:形容詞シク活用型

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
(まじく)
まじから
まじく
まじかり
まじ
〇
まじき
まじかる
まじけれ
〇
〇
〇

■ 「まじ」の接続

活用語の終止形に付く。ただし、ラ変型活用語には連体形に付く。

解説

1 「まじ」の意味

「まじ」は、打消推量うちけしすいりょうの助動詞です。

「まじ」の意味は、ちょうど「べし」の意味を打ち消したものになります。

アドバイス

「べし」の意味は、《推量・意志・可能・当然・命令・適当》でした。(「すいかとめて」のゴロ合わせで覚えます。)

「まじ」の意味は、それぞれの意味を打ち消した《打消推量・打消意志・不可能・打消当然・禁止・不適当》になります。

(1) 打消推量

打消推量は、否定的な推量であり、<~ないだろう>と訳します。

冬枯れの気色けしきこそ秋にはをさをさ劣るまじけれ。(徒然)

<…なかなか劣らないだろう。>

(2) 打消意志

打消意志は、否定的な意志であり、<~ないつもりだ>と訳します。

我が身は女なりとも、敵かたきの手にはかかるまじ。(平家)

<…敵の手にはかからないつもりだ。>

(3) 不可能

不可能は、<~(ことが)できそうにない>と訳します。

この女見では世にあるまじき心地のしければ(竹取)

<…生きることができそうにない気持ちがしたので>

(4) 打消当然・不適当

打消当然・不適当は、<~はずがない・~べきでない>と訳します。

かの国人、聞き知るまじく思おもほえたれども(土佐)

<…聞いてわかるはずがないと思われたけれども>

妻めというものこそ、男をのこの持つまじきものなれ。(徒然)

<…男が持つべきでないものである。>

(5) 禁止

禁止は、<~してはならない>と訳します。

つかのまも忘るまじきなり。(徒然)

<少しの間も忘れてはならないのである。>

もっと知る

「む」と「べし」は推量の助動詞であり、「む」の意味を強めたのが「べし」です。

そして、「む」と「べし」のそれぞれの打消が、打消推量の助動詞の「じ」と「まじ」に当たります。

「じ」と「まじ」の間には、「む」と「べし」の関係に対応して、「じ」を強めたものが「まじ」という関係があります。

【図】「む・べし・じ・まじ」の関係

「む・べし・じ・まじ」の関係

2 「まじ」の活用

「まじ」は、形容詞のシク活用と同じ活用をします(形容詞シク活用型)。

【表】「まじ」の活用表

基本形 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
まじ (まじく)*
まじから
まじく*
まじかり
まじ
〇
まじき
まじかる
まじけれ
〇
〇
〇

* 連用形は、係助詞「は」が付く形でのみ用いられます。もっとも、「まじく(は)」を未然形とする考え方もあります。

もっと知る

連体形「まじき」の音便化した「まじい」から「まい」が生じて現代にいたります。

なお、この「まじき」は、「あるまじき」などの形で現代語にも残っています。

3 「まじ」の接続

「らし」は、活用語の終止形に付きます。

ただし、ラ変型活用語に付く場合は、その終止形ではなく、連体形に付きます。「あり」+「まじ」→「あるまじ」

ラ変型活用語とは、ラ変動詞、形容詞、形容動詞、ラ変型の助動詞をいいます。

練習問題

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コメント

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コメント: 2
  • #1

    原始星 (金曜日, 02 6月 2023 23:19)

    3 「まじ」の接続
    「らし」は、活用語の終止形に付きます。

    ^ 間違いかも

  • #2

    jすあdlふdcぅはぃえcb (金曜日, 02 8月 2024 13:55)

    「ラ変の場合は」終止形接続の推量系の助動詞は連体形接続です。

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