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「まし」

要点のまとめ

■ 「まし」の意味

① 反実仮想はんじつかそう<もし~だったなら、~だろうに>……現実に反する仮想にもとづく推量。

(例) 世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし <もし世の中にまったく桜がなかったなら、春の人の心はおだやかだろうに>

② ためらいの意志<~しようかしら>

(例) これに何を書かまし。<これに何を書こうかしら。>

③ 推量<~だろう>

(例) おとなしく聞こえなまし。<きっと穏やかに聞こえるだろう。>

■ 「まし」の活用

「まし」:特殊型

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
ませ
ましか
〇 まし まし ましか 〇

■ 「まし」の接続

活用語の未然形に付く。

解説

1 「まし」の意味

「まし」は、推量の助動詞の一つで、次のような意味を持ちます。

(1) 反実仮想はんじつかそう

反実仮想とは、現実﹅に反﹅することを仮﹅に想﹅定して、それをもとに推量することです。<もし~だったなら、~だろうに>などと訳します。

「まし」が反実仮想を表すのは、次のように、仮定条件と合わせて用いられる場合です。

世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし(古今)

<もし世の中にまったく桜がなかったなら、春の人の心はおだやかだろうに>

※「世の中に桜がまったくない」という現実に反する仮想をもとにして、「春の人の心はおだやかだろう」と推量しています。(現実には、世の中には桜があるので人の心が落ち着かないことを意味します。)

反実仮想に用いられる形として、次の四つを押さえておきましょう。

反実仮想の構文

① ~ましかば、~まし

② ~ませば、~まし

③ ~せば、~まし

④ 未然形+ば、~まし

「ましかば」……「まし」の未然形(已然形)+「ば」。

「ませば」……「まし」の未然形+「ば」。

「せば」……「き」の未然形+「ば」。

(2) ためらいの意志

ためらいの意志は、<~しようかしら>などと訳します。この用法の多くは、疑問語(「何」「や」など)をともないます。

これに何を書かまし。(枕)

<これに何を書こうかしら。>

(3) 推量

推量は、<~だろう>と訳します。

うららかに言ひ聞かせたらんは、おとなしく聞こえなまし。(徒然)

<…きっと穏やかに聞こえるだろう。>

もっと知る

「まし」の意味として、《希望》が挙げられることもあります。《希望》は、実現不可能であるというニュアンスをふくみ、<~したらよいのに>などと訳します。

・見る人もなき山里の桜花ほかの散りなむのちぞ咲かまし(古今)

<…ほかの花が散ってしまったあとで咲いたらよいのに>

2 「まし」の活用

「まし」は、特殊な活用のしかたになります(特殊型)。

【表】「まし」の活用表

基本形 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
まし ませ
ましか
〇 まし まし ましか 〇

3 「まし」の接続

「まし」は、活用語の未然形に付きます。

練習問題

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コメント: 1
  • #1

    ee (土曜日, 24 9月 2022 22:09)

    わかりやすすぎ

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